なぜカープはFAで補強をしないのか?

その他

カープがなぜFA市場で他球団のように積極的な補強をしないのか。

歴史的背景と近年の方針の変化を考察します。

1. 2025年オフも沈黙 — カープがFA補強しない現状

2025年シーズンオフも、カープはFA市場で大きな動きを見せなかった。

横浜の桑原将志や楽天の辰己涼介など、FA権を行使する選手の名前は挙がっていたものの、広島が獲得に動く気配は最後までなかった。

もっとも、今オフに関して言えば、チーム事情を考えると大きな補強ポイントではなかったとも言える。その意味では、静かなオフは妥当だったのかもしれない。

しかし、ファンの記憶に強く残っているのは「昨オフ」だろう。

昨年は中軸を打てるバッターが明らかに不足しており、補強が急務だった。

FA権を行使した横浜の佐野恵太や阪神の大山悠輔といった名前が取り沙汰され、カープの動向に注目が集まったが、結果として両者は所属球団に残留。広島が獲得調査を行っているという報道も、ほとんど見られなかった。

結果論ではあるが、昨オフに獲得したファビアン、モンテロの両助っ人が中軸として機能し、打線は一定の強化に成功した。

それでも、「補強が必要だった年ですらFAに参戦しなかった」という事実は、多くのファンの印象に残ったはずだ。

こうした積み重ねから、「広島はFA戦線に参加しない球団」というイメージが、半ば常識のように語られるようになった。

2. 「広島はFAに参加しない」というイメージの正体

このイメージが強くなった背景には、過去の出来事が大きく影響している。

象徴的なのが、2015年オフにFA宣言をした木村昇吾のケースだ。

木村は宣言後、なかなか獲得先が現れず、最終的には年明け2月という異例のタイミングで入団テストを経て西武に加入することになった。

当時のカープは、FA宣言後の残留を基本的に認めない方針を取っていたとされている。

そのため、「広島からFA宣言=他球団への移籍」という認識が、ファンの間でも定着していった。

FA権を取得すること自体が、すなわちチームを去る決断を意味する。

そう捉えられていた時代が、確かに存在していた。

3. 実は近年、方針は変わってきている

しかし、この10年ほどで球団の姿勢は少しずつ変化してきている。

その転換点として挙げられるのが、三連覇を支えた丸佳浩のFA宣言だろう。

このとき、球団は「宣言残留を認める」方針を取ったと報じられた。結果的に丸は巨人へ移籍したが、この対応は、従来のカープとは明らかに異なる姿勢だった。

その後も、2023年オフの西川龍馬、2024年オフの九里亜蓮と、二年連続で主力選手がFA権を行使し移籍している。

いずれのケースでも、「宣言残留は認めない」といった強硬な方針が強調されることはなかった。

少なくとも現在のカープは、「FA宣言=即退団」という球団ではなくなっている。

「広島からFA宣言=必ず他球団へ移籍」という認識は、もはや過去のものになりつつあるのかもしれない。

4. 秋山翔吾獲得が示した球団の変化

さらに象徴的だったのが、2022年6月の秋山翔吾獲得だ。

メジャーリーグからの帰国という特殊なケースではあったものの、他球団で実績を積んだスター選手が広島に加入するというニュースは、多くのカープファンに衝撃を与えた。

これまでカープは、FA権を行使した選手を獲得した実績が一度もない。

その意味では、秋山はFA補強そのものではない。実際、2025年オフ現在も「FA権行使選手の獲得数」は0のままだ。

それでも、秋山獲得は球団のスタンスが確実に変わりつつあることを示していた。

かつてのように、「外部から実績ある選手を獲ること自体が考えられない球団」ではなくなっている。

そう考えると、カープが初めてFA市場で選手を獲得する日も、決して遠い未来の話ではないのかもしれない。

5. 結論:カープは「FAを使わない球団」なのか

カープがFAで補強をしない理由は、単純に消極的だからではない。

育成を重視する編成方針、過去の成功体験、そして地方球団としてのリスク管理。そうした要素が重なった結果、FA市場で慎重な判断を続けているに過ぎない。

ただし、その方針は少しずつ変化してきている。

「FAを使わない球団」ではなく、「使いどころを選び続けてきた球団」と捉える方が、今のカープには近いように思える。

この姿勢が今後も貫かれるのか、それとも初のFA補強に踏み切る日が来るのか。

ファンとしては、その選択を静かに見届けたい。

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